Abstract : |
気管支形成術後の吻合部肺側の気管支循環の傷害及び回復過程を明らかにし, 更に吻合部の被覆が気管支循環の回復に与える影響を知るために, 犬を用いて気管支形成術後の吻合部口側及び肺側の気管支壁組織酸素分圧(以下PtO2)を測定した. 気管支循環の傷害の評価には吻合部口側PtO2に対する肺側PtO2の比(以下肺側口側PtO2比)を用いた. また気管支循環の傷害が吻合部の創傷治癒に与える影響を知るために吻合部気管支壁ハイドロキシプロリン(以下Hyp)量を測定するとともに, 吻合部の肉眼的, 組織学的観察を行った. 肺側口側PtO2比は術前0.98であったが, 術直後では0.45に低下した. 術後3日目には0.54, 7日目には0.74, 14日目には0.80と術後日を経るにしたがって上昇した. 吻合部を有茎胸膜で被覆しても肺側口側PtO2比の回復は促進されず, また遊離胸膜で被覆するとこの回復は遅延した. 吻合部口側気管支壁のHyp量は術後7日目までは低下したが術後14日目には上昇した. これに対して肺側では術後14日目まで低下し続けた. このHypの低下は吻合部を被覆したもので著しかった. 組織学的観察では好中球の浸潤, 小膿瘍の形成, 上皮の欠損, 扁平上皮化生, 気管支軟骨の変性, 萎縮, リンパ管の拡張が吻合部単側気管支にみられた. 術後7日目以降では粘膜固有層に膠原線維が増生し吻合線を越えて気管支軟骨膜に連なる像がみられた. これは気管支軟骨が吻合部の癒合に重要な役割を果たしていることを示す所見と思われた. |