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川田忠典, 安藤直明, 日向三郎, 三枝隆, 正木久朗, 保尊正幸, 舟木成樹, 岡田忠彦, 稗方富蔵, 野口輝彦 |
| Abstract ： |
低体温法を併用した乳幼児開心術中の中枢神経系機能モニターとして短潜時聴性脳幹誘発電位(ABR)の連続的測定を行い, その意義及び問題点について検討した. 循環停止例5例, 低流量灌流例5例, 通常流量灌流例15例を対象とし, 麻酔導入直後より手術室退室までの間, ABRの連続記録を行い, I, III, V波潜時, I～III, III～V, I～V時間を計測した. ABR各波潜時は冷却, 加温に応じて延長, 短縮し, 食道温20.6±2.3℃, 直腸温23.8±0.1℃で全波形消失し, モニターとしての役割を失った. 復温後ほとんどの症例では, ABR各波潜時は冷却前値に復元され, その復帰時間は短時間循環停止, 低流量灌流, 維持低体温中平均血圧, 加温直前pH, pO2, pCO2及び体外循環時間による影響が認められず, 加温時間のみに濃厚関与した. 術後ABR潜時が延長したのは2例であり, 1例は循環停止中の不十分な, 且つ不均等な冷却による多臓器不全に伴った意識障害例で, 他例は術後脳神経学的異常を認めなかった. 他に術後及び麻酔導入時の心停止事故後, ABR波形は正常であったが, 脳神経学的に異常な経過を示した2例を経験した. 症例数が少なく, 術後単独脳傷害例が乏しかったことから, 結論は下せないが, 低体温体外循環中, 中枢神経系機能に対し抑制的に働らくと考えられる諸条件はABR波形変動に反映されず, 加温時間のみが関与したという結果から, ABR測定により術後脳傷害の存在及びその早期予後を判定するのは困難であろうと推察された. |
