Abstract : |
急性拒絶反応の電気学的モニタリングの可能性を探るため, イヌ異所性移植心において各々の電気生理学的変化と病理組織学的障害部位及び程度との対応を調べた. 雑種犬を用い, 心房中隔欠損を作成したドナー心をレシピエントの後腹膜腔内に異所性移植し, 右房・His束近傍・右室に心内膜電極を装着した. 計12例の心移植を行い, 免疫抑制剤としてCyclosporin AとPrednisoloneを投与し, 移植後の観察期間は8~23(平均12.3日)であった. 電気生理学的検査は, 術後1~4日目を初期対照とし, 術後5~21日目に行い, 早期刺激法にて, 房室伝導系と心室の有効不応期(ERP)を測定した. 病理組織学的検討は, 最終の電気生理検査後にドナー心を摘出して行い, 房室結節~His束~右・左脚部とそれ以外の心室中隔部とに分けて, 細胞浸潤及び心筋細胞障害の分布, 程度を検討した. 房室伝導系の有効不応期は, 10例中6例で120±25msecから192±35msecへ延長し, 対照値に対する最終値の変化率は164±34%(p<0.02)であった. これに対して, 心室の有効不応期は7例中4例で153±36msecから123±17msecと短縮し, 最終値の変化率は82±9%(p<0.05)であった. 病理組織所見は, 12例中8例で刺激伝導系に単核細胞, 繊維芽細胞などの浸潤を認め, 細胞浸潤がみられなかった4例では房室伝導系の有効不応期は変化しなかった. 刺激伝導系以外の心室中隔部では, 12例中8例で細胞浸潤を伴った心筋細胞障害を認めた. 以上の結果から, 刺激伝導系における細胞浸潤に対する房室伝導系の有効不応期の延長のSensitivityは有意であり, 移植心の電気生理学的モニタリングの可能性が示唆された. |