アブストラクト(36巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心筋特異S100a0蛋白質による心筋障害評価法
Subtitle : 原著
Authors : 碓氷章彦, 阿部稔雄, 村瀬允也, 田中稔, 竹内栄二, 加藤兼房*
Authors(kana) :
Organization : 名古屋大学医学部胸部外科, *愛知県コロニー研究所生化学
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 6
Page : 969-973
Year/Month : 1988 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 心筋に高濃度に分布するS100a0蛋白質の血中値及び尿中排出量を測定し, CK-MBと対比しながら開心術中の心筋障害評価法としての有用性を検討した. 対象は僧帽弁疾患の開心術26例で, 経時的に18回の測定を行った. 対照群として胸骨正中切開非開心術5例を用いた. また, 冠状静脈血値と末梢動脈血値との差を求め, 心筋からの逸脱量を推定した. S100a0血中は, 麻酔導入後0.32±0.28ng/mlで, 遮断解除後に急増し, 解除45分に14.4±6.63ng/mlの最高値を示し, 以後急減した. CK-MB血中値は麻酵導入時1.99±1.06ng/mlで, 解除3時間に107±54.5ng/mlの最高値を示し, 以後暫減した. 対照群では, S100a0, CK-MBともに有意の上昇はみられなかった. 冠状静脈血値と末梢動脈血値との差は, S100a0は遮断解除15分に14.7±1.94ng/mlの最高値を示し, CK-MBは遮断解除時に15.4±18.1ng/mlの最高値を示した. この時点ではともに冠状静脈血値と末梢動脈血値との間に有意差を認めたが, 他の時点では有意差は認められなかった. 尿中排出量は, S100a0が遮断解除後に著増し, 遮断解除2~3時間16,300±12,000ng/時間と遮断前の約400倍の上昇を示したのに対し, CK-MBは遮断解除後1~2時間135±95ng/時間で, 遮断前の7倍の上昇にとどまっていた. 従って, S100a0はCK-MBに比して心筋からの逸脱が早く, 尿中に速やかに排出されるため, 測定時における心筋障害の程度を反映しやすく, 即時性が高いと考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : S100a0蛋白質, CK-MB, 心筋保護, 開心術, 心臓弁膜症
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