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右房粘液腫に伴う三尖弁閉鎖不全に対する外科治療の報告は, 本邦ではいまだ少ない. 症例は31歳, 女性, 昭和57年11月26日, 右房粘液腫, 三尖弁閉鎖不全の診断にて, 右房粘液腫摘出術, 及び高度の三尖弁病変に対する三尖弁輪形成術を施行した. 術後経過は良好であったが, 1年7ヵ月後, 三尖弁閉鎖不全の増強を認め, Ionescu-Shiley弁(サイズ33mm)による三尖弁置換に至った1症例を経験した. 石灰化を伴う右房粘液腫症例に際し, 三尖弁の変化は高度である場合があり, 術中三尖弁, 三尖弁輪, 弁下組織に対する精査が重要である. 自験例及び同種疾患を扱う本邦36例の報告から考慮して, 腫瘍の機械的刺激で破壊された三尖弁に対しては術式選択に関し十分な検討を要する. 右心粘液腫は原発性心臓腫瘍の中でも比較的まれな疾患である. 本邦報告例は自験例を含め37例にすぎず, 三尖弁の二次性病変に関する記載は少ない. 今回われわれは右房粘液腫摘出術, 及び三尖弁輪形成術施行後, 1年7ヵ月の遠隔期に三尖弁閉鎖不全(TR)が増強し, 三尖弁置換(TVR)に至った1例を経験した. 右房粘液腫の外科治療の反省と考察から, 2, 3の知見を得たので, 症例の報告とともに文献的考察を加えた. |
