Abstract : |
胸部外科手術後に生じる乳糜胸は比較的少ない合併症で, その発生頻度は胸腔内手術の0.02~0.21)2)と報告されている. しかしながら乳糜胸は, いったん生じると自然には治癒しがたく, その治療法にも外科的なものから保存的なものまで, その内容も様々ある. われわれは肺癌手術後に生じた乳糜胸に対しては積極的に再開胸を行い, 胸管損傷部位の結紮を行って満足すべき結果を得た. 国立がんセンター創設以来, 1983年12月までの21年間, 原発性肺癌切除例は1,456例で, そのうち9例, 0.6%に術後乳糜胸の発生を認めた. 9例全例ともリンパ節の廓清を行っており, 再開胸までの時期は肺癌切除術1~19病日, 再開胸までの1日の排液量は170~2,000mlで, 平均761ml, 再開胸後のドレーン留置期間は1~9日, 平均3.5日であった. 再開胸を行って, 損傷部位の結紮を施行し, それにより乳糜胸は全例治癒した. われわれは胸管損傷部位を確認するために, 術直前に牛乳を飲用させ, 胸管を流れる乳糜の量を増加させて術中の損傷部位の診断に役立てているが, この方法により全例で損傷部位の確認が可能であった. 左開胸5例の損傷部位は全例が左鎖骨下動脈根部周囲で, 右側では4例中2例は気管分岐部, 残る2例は前縦隔と後縦隔であった. |