Abstract : |
Crystalloid cardioplegiaにおける基質の必要性及びCa拮抗薬, MgCl2の添加の有効性を検討した. ラット灌流心臓を対象に30℃, 2時間の心筋虚血を行い, 30分間ごとに5分間のMultidose cardioplegiaを施行し再灌流後の心機能, 酸素代謝の回復を調べた. 今回は25mMのK+を含む7種の心筋保護液につき検討した. 1)心筋保護施行時の虚血性心筋硬縮(左室圧上昇により判定)の頻度は基質無添加液及び酢酸リンゲル保護率で有意に高く, Ca++拮抗薬添加液ではまったく認められない. 再灌流後のstone heartは酢酸リンゲル液にのみ発生した. 2)10mM glucose添加Krebs Ringer保護液は無基質Krebs Ringer液に比し明らかに優れた心筋保護効果を示した. 更に10mMのMgCl2及びカルシウム拮抗薬(DTZ 2mg/l)を添加すると保護効果が一層高められた. 一方, コハク酸, 酢酸など解糖系中間基質の添加は心筋保護効果を減少させた. 3)Multidose保護法では保護液の酸素化とグルコース添加により保護液注入時には細胞内酸素濃度が好気的レベルにまで上昇し好気的代謝が営まれ, 虚血時には嫌気的解糖が刺激され心筋エネルギーレベルが高く保たれると考えられた. またミトコンドリヤ基質であるコハク酸, 酢酸の保護効果がグルコースより劣った著者らの成績につき機序を考察した. 4)MgCl2, Ca++拮抗薬は虚血時の心筋酸素需要を抑制し心筋をより好気的に保ち明らかな保護効果を示した. 特にMgCl2添加群での心機能, 酸素利用能の回復が最も優れた. |