Abstract : |
3ヵ月未満開心術症例の成績向上に資する目的で1977年より1985年4月までに施行されたTGAに対するMustard手術症例25例, 及びTAPVC根治術症例30例の臨床成績, 術後カテコラミン投与量, 術中体外循環時の諸指標, 心筋保護液(Young液, GIK液)注入量, 注入回数について検討を加えた. 心筋保護法に関しては全例topical coolingが併用されていた. 体外循環中の諸指標においては, TGA症例, TAPVC症例のいずれにおいても, 臨床成績との関連はなかった. しかし, 心筋保護液使用量に関してはTGA症例において, 3ヵ月未満群では, GIK注入量が11ml/kg以上では全例死亡, 11ml/kg以下の症例は全例生存, また6ヵ月未満群では, 成績は安定しているもののカテコラミン使用量はsingle dose群に低い傾向を認め, 3ヵ月未満症例では11ml/kg以上の注入は良くないことが示唆された. 3ヵ月未満症例の豊富なTAPVC症例の検討ではこの傾向は顕著であり, 90分以内の大動脈遮断症例では11ml/kg以内のsingle infusionが望ましく, 90分以上の症例において追加注入を要することが示唆された. しかしながら, 一方では, われわれの用いているGIK cardioplegiaは乳児期早期症例の心筋保護効果として今なお不十分であることが示唆され, 今後詳細な検討が必要であると考えられた. |