アブストラクト(36巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 複雑心奇形に対するFontan型手術後の急性肝障害の臨床的検討 ―主として発生に関与する因子について―
Subtitle : 原著
Authors : 松田暉, 広瀬一, 中埜粛, 島崎靖久, 西垣恭一, 榊成彦, 高野弘志, 小川實*, 妙中信之**, 川島康生
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科, *大阪大学医学部小児科, **大阪大学医学部集中治療部
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 7
Page : 1135-1141
Year/Month : 1988 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 単心室症(SV)9例を含む15例(手術時年齢3~16歳)の複雑心奇形に対するFontan型手術の術後急性期の肝障害(ALD)につき検討した. SVの7例では共通房室弁を伴い, 心房内分画術を要した. 術後1週間の血清GPT(U/L), 総bilirubin(TB, mg/dl)の最高値, prothrombin time(PT, %)の最低値は, GPT;55~4,200(mean 1,386), TB;1.7~7.3(4.3), PT;19~72(37.2)であった. これらをScore(S, 0~4)化し, その総和をALD-Sとした. ALD-Sは, 0~2(正常)が5例, 3~5(軽度異常)が2例, 6~11(中等度~高度異常)が8例(53.3%, 6例がSV)であった. ALD-Sを目的変数とし, 体外循環時間(ECC), 大動脈遮断時間, 術後24時間の血行動態[心係数(CI), 中心静脈圧(CVP), 収縮期血圧(SAP), 時間当たり尿量(U/O), 混合静脈血酸素飽和度の各々の平均値]及びdopamine最大投与量を説明変数として重回帰分析を行った. CI(2.3±0.7l/min/m2), U/O(1.8±0.7ml/kg/min), SAP(82.3±16.1mmHg), 及びCVP(17.5±3.8mmHg)の4項が有意にALD-Sを予測し, 且つCIの影響が最も大きく, 次いでU/O, SAP, CVPの順であった. 血漿交換を要したものは1例であった. ALD-S≧6群(n=8)は<6群(n=7)に比し, 術前のTBが高く(1.7±0.4vs1.1±0.4mg/dl, p<0.05), 且つGPTは術前に比し術後1ヵ月で有意に高値であった(9.3±4.1vs28.1±16.8U/L, p<0.05). 手術死亡-1, 病院死-3があり, 後者の2例はALD≧6に属した. 3例で術後急性期に肝静脈血の酸素飽和度が10%以下の高度の低下を示し, それらのALD-Sは5, 8, 11であった. 以上より, 複雑心奇形でのFontan型手術後にはALDが生じ易く, これには高いCVPが関与するが, 低心拍出状態がより重要な因子であることが示された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : Fontan手術, 術後急性肝障害, 単心室, 複雑心奇形, 肝静脈血酸素飽和度
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