Abstract : |
体外循環が及ぼす尿細管障害の程度と推移を反映するより優れた指標を明らかにするため, 尿細管機能指標として注目されているβ2-microglobulin(β2-m), N-acetyl-β-D-glucosaminidase(NAG)及び特異性がさらに高いと考えられるα1-microglobulin(α1-m)の3指標を中心に, 従来の尿細管指標FeNa, RFI, Fc-Pと比較検討し, 更に多変量解析による主成分分析を行った. この結果3指標の指数値(尿中値/尿中Cr)と, 排泄分画(Fc-α1-m, Fc-β2-m), FeNa, RFI, Fc-Pは体外循環開始とともに異常を示し, 終了付近でピークとなった. 従来の指標は術後24時間でほぼ正常化したが指数値, Fc値は14病日まで異常を示す率が高く, 特にFc-α1-mが個体差も少なくこの経過を特徴的に反映した. 主成分分析では術中, 術後尿細管指標の負荷量が大きく, 14病日の負荷量が最も大きかったのはFc-α1-mであった. また術中尿量の多少と術中尿中排泄量は相関が認められなかったが, 尿中値の最高値が半分まで回復する時間MAX T1/2と尿中排泄量はα1-mでr=0.674(p<0.01)と高度有意の相関を認めた. これからα1-m, β2-m, NAGは尿量の影響が少なく, α1-mは尿中排泄量から予後推定も可能と考えられた. 尿細管機能障害は体外循環開始とともに生じ終了付近でピークとなるが, 1病日に急速に回復し, 更に14病日以降まで障害が遷延すると考えられた. この障害のピーク及び遷延傾向を反映する指標は, Fc値, 特にFc-α1-mが最も優れていると考えられた. |