アブストラクト(36巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 有瘻性慢性膿胸に対する有茎性大網充填術の臨床的意義
Subtitle : 原著
Authors : 北野司久, 辰巳明利, 松井輝夫, 山下直己, 山中晃, 藤尾彰*
Authors(kana) :
Organization : 天理よろづ相談所病院胸部外科, *関西医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 8
Page : 1255-1263
Year/Month : 1988 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 気管支瘻・肺瘻を合併する慢性膿胸はその治療に難渋する疾患で, 終局的には外科療法を必須とするが, 肺機能や体力の面からプアー・リスクの患者が多い. そこで, 侵襲の大きな手術は避けるとともに, その治療期間も短縮すべきである. この点を考慮して, 血行豊富で抗炎症作用の強い大網を利用した有茎性大網充填術(大網法)の臨床応用を試みた. 対象は胸壁穿孔を伴った有瘻性慢性膿胸5例で, その年齢分布は36~88歳(平均57.4歳)であった. 大網法施行の全例に所期目的が達成できて, その後の再発もなくて治療期間を短縮できた. この大網法の要点は, 1)柔かい大網片は瘻孔部や膿胸腔に密着し易い利点があり, これを当該部に被覆充填するのがキーポイントである. 2)手術侵襲を小さくする為に無理な肺の授動は行わずに, 可能なかぎりの膿胸腔の掻爬・洗浄が重要. 3)腔内に充填する際, この有茎性大網片の屈曲やその栄養血管の損傷を作らないことが肝要である. 4)遺残死腔が存在すれば, その外側で有茎性筋肉弁・胸壁セグメントを補足充填してその閉鎖を期する. 長期的術後の観察には胸部CTが有用で, 脂肪組織と同じCT値を示す大網は容易に観察できた. 臨床的効果において, 全例に臨床症状の改善をみた. 特に術前に酸素療法を必要とした2症例も呼吸困難がとれ, その1例には肺機能や血液ガスの改善が確認できた. また, 超高齢者(88歳)にも成功したことは, この術式が心肺機能を低下させないことを示唆した. 従って, 正常な大網を有する成人ならば大網法の適応があると考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 有瘻性慢性膿胸, 胸壁瘻, 有茎性大網充填術, 瘻孔閉鎖術
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