Abstract : |
後天性僧帽弁疾患に合併する機能的三尖弁閉鎖不全(以下TR)の評価を目的として, 術中に超音波の探触子を直接心臓表面にあててパルス・ドプラー法(以下PD法)を行った. 直視下僧帽弁手術を行った28例を対象として, 術中PD法の結果を術前の経胸壁PD法の結果と比較した. TRの診断基準としては, 術中に行った三尖弁逆流テストの結果を用いた. 経胸壁PD法では, 右房内で全収縮期にわたって記録されるTRシグナルの三尖弁口からの到達距離を基準として, TRの判定を行った. 術中PD法では, 右房及び右室流入路に定めた8ヵ所のsample volumeのうち, どのsample volumeでTRシグナルが記録されるかによってTRを判定した. TR診断の鋭敏度(sensitivity)は, 経胸壁法89%, 術中法100%, 特異度(specificity)は, 経胸壁法47%, 術中法74%と, 術中法の方がともに高い傾向がみられた. 術中PD法でTR陽性と判定された14症例の中には, 術中三尖弁逆流テストの結果が陰性である症例が4例含まれており, 三尖弁に対する手術方針の決定には術中の直視下所見が大切と思われた. しかし, 術中法でTR陰性と判定された症例は, すべて術中三尖弁逆流テストの結果が陰性であり, 術中PD法は, 手術症例のTR評価には有用な診断法であるとの結論を得た. |