アブストラクト(36巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 脳分離体外循環における脳代謝の検討 ―内頸静脈酸素飽和度連続モニタリングを用いて―
Subtitle : 原著
Authors : 桑原正知*, 山本文雄, 加瀬川均, 安藤太三, 安達盛次, 中島伸之, 奥村福一郎**
Authors(kana) :
Organization : 国立循環器病センター心臓血管外科, **国立循環器病センター麻酔科, *宮崎医大第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 8
Page : 1319-1325
Year/Month : 1988 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 弓部大動脈瘤の外科治療に補助循環として用いられる脳分離体外循環において, われわれの行っている脳灌流条件下における脳循環代謝の変動を内頸静脈酸飽和度(SjO2)を連続モニタリングして検討した. 対象は7例(男5例, 女2例)の解離性大動脈瘤(弓部解離)で弓部大動脈人工血管置換術が施行された. 右内頸静脈からoptic fiberカテーテルを挿入しbulbus jugularisに固定しSjO2を連続モニタリングし, 更に時間ごとの動静脈採血にてガス分析, 酸素含量測定を行い脳酸素消費量(CMRO2), 脳酸素摂取率(OER)を算出した. また乳酸値から脳乳酸摂取率(CLU)を計算した. 脳分離体外循環は, (1)直腸温25℃, (2)脳灌流量500ml/min, (3)灌流圧40~60mmHg, (4)両側浅側頭動脈モニター下で脳灌流は一定条件で行った. 7例中2例を多臓器不全と敗血症にて失ったが全例術後脳障害は認めなかった. 脳分離体外循環時間は138.9±53.4分であった. CMRO2は36℃, 麻酔下で2.7±0.2ml/min/100gであり, 25℃では1.1±0.4ml/min/100gと約40%に減少した. SjO2は温度変化と関係なくOERとr=-0.823と良い負の相関を示した. 内頸静脈血酸素分圧(PjO2)の変化は温度変化で有意差を認めなかった. またCLUは脳分離体外循環の前後において有意差は無かった. 以上よりわれわれの脳灌流方法は25℃においてSjO2, PjO2, CLUともに良好であり脳酸素需要供給バランスは良好に保たれていたと思われた. またSjO2連続モニタリングは術中の脳循環管理において有用な指標の1つに成り得ると考えている.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 弓部大動脈瘤, 脳分離体外循環, 脳灌流法, 内頸静脈酸素飽和度, 脳循環代謝
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