アブストラクト(36巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 原発性肺癌切除例の肺血管外水分量に関する研究
Subtitle : 原著
Authors : 小泉潔, 山手昇, 五味淵誠, 笹井巧, 富士崎隆, 塩田晶彦, 川本雅司, 加治正弘, 庄司佑
Authors(kana) :
Organization : 日本医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 8
Page : 1339-1346
Year/Month : 1988 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 二重指示薬希釈法を利用したLung Water Computer Model 9310を用い原発性肺癌切除例の肺血管外水分量(EVLW)を, 術前及び術後約30日目に測定した. 同時にSwan-Ganzカテーテルを用いて血行動態検査を施行し, EVLWと従来の血行動態パラメーターとから術前及び慢性期管理の臨床的意義に関し検討した. 対象は37例である. そのうち術前術後ともに検討できた24例を中心に病期別, 肺切除量別に分類検討した. 1)肺癌患者の術前EVLWは8.07±0.16ml/kgとやや高値を示したが病期間に有意差はなかった. 2)術前術後の増加・減少率の%変換値ではI, III期ともに術後減少したが, 減少率はI期に高かった. 切除量別では7区域以上~全摘例で減少率が小さく, 不変, 又は増加傾向がみられた. 3)血行動態では, 心拍数(HR), 肺動脈圧(PAP)はI, III期ともに術後増加した. I期では, HRの増加は肺血管抵抗(PARI), 総肺抵抗(TPRI)の上昇を相殺する心拍出係数(CI), 一回左室仕事係数(LVSWI), 一回右室仕事係数(RVSWI)の上昇という有利な心機能亢進をもたらした. これに対し術前左心系の機能亢進が認められたIII期ではPARI, TPRIの高度の上昇に伴うCl, LVSWI, RVSWIの顕著な低下で代償不全傾向が認められた. また, 7区域切除以上の切除群では術後両心機能の低下とともに総肺抵抗, 肺血管抵抗の上昇を認めた. すなわち, 進行癌・多区域切除例では術後両心機能の低下と肺血管抵抗の上昇とともにEVLWの貯留傾向がみられた. 以上から, 術前・術後両心機能とELVWの測定は病期・切除量と心機能・EVLWとの相互関係の評価に有用であった. しかしながら, EVLWのみで肺癌患者の心肺機能の評価はできない. 現時点では術前心機能が良好にもかかわらずEVLW 8.0ml/kg以上の進行肺癌例では, EVLWを減少させるために術前より代償性心機能亢進状態にあると考えられる. そのため, 術後代償不全に対する強心配糖体・カテコラミン・血管拡張期による積極的な治療が, 慢性期performance statusの低下予防とともに重要である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 肺血管外水分量, 二重指示薬希釈法, 肺癌切除例, 血行動態, 社会的活動能力
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