アブストラクト(36巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 冠側副循環のA-Cバイパス術術前, 術後に及ぼす影響に関する臨床的研究
Subtitle : 原著
Authors : 原田泰, 瀬在幸安
Authors(kana) :
Organization : 日本大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 8
Page : 1352-1361
Year/Month : 1988 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 冠側副循環の概念は, 古くから研究, 報告されており成因に関してはほぼ定説が得られているが, その臨床的効用はいまだ議論が多く, 特に, 外科的冠動脈血行再建術(A-Cバイパス術)における影響については不明な点が多く, A-Cバイパス術における冠側副循環の影響を, 術後早期及び術後遠隔期における心機能を中心に比較検討した. 術後早期の検討は, IABP施行例45例で, 術前冠動脈造影で側副循環を有する群21例, 有さない群24例で行い, 側副循環を有する群では, 有さない群に比べて, IABP補助期間は短く, また心機能の回復も速やかで, 側副循環はIABPの効果を促進すると考えられた. 術後遠隔期の比較は, 術後2~24ヵ月に術後検査を施行した症例154例を対象とし, 術前冠動脈造影で, 側副循環を有する群76例, 有さない群78例に分け, 更に, 両群をそれぞれ狭心症群, 心筋梗塞症群に分けて検討した. 狭心症群(64例)では, 側副循環を有することにより有意の改善を認めたのは心係数だけであり, 一方, 心筋梗塞症群(90例)では, 心係数, 左室拡張末期圧, 左室駆出率でいずれも側副循環を有する群で有意の改善を認めた. 特に左室壁部分収縮率における前壁部分の改善が著明であり, これは, 側副循環による梗塞組織, 又は周囲組織のviableな心筋組織が, A-Cバイパス術によって梗塞領域の心機能を代償し得るまでに再灌流されることによる効果と考えられた. 以上, 冠側副循環のA-Cバイパス術後心機能に及ぼす影響を検討し, 冠側副循環は, 術後心機能の回復を早め, 機能的改善を促進するという結論を得た.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 冠側副循環, A-Cバイパス術, IABP, 虚血性心疾患, 左室機能
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