Abstract : |
開心術後のいわゆる“術後紅皮症”2例を経験し, 1例はA-Cバイパス術後68歳男性, 1例は二弁置換術後44歳男性であった. いずれも術後10日すぎより, 発熱, 紅斑, 肝機能障害, 汎血球減少, 骨髄無形成を示し, 急速に死亡した. 皮膚生検にて, 表皮基底層にリンパ球の浸潤を認め, これは免疫組織学的検査により, 大部分がcytotoxic/suppressor T細胞であることが判明した. また, 患者と家族の末梢リンパ球HLA所見が, 塚族関係と矛盾する結果を得た. 以上の定型的臨床経過, 皮膚組織所見, HLA型所見は, 輸血後GVHDの報告例と一致し, 術後紅皮症患者には, 特別な細胞免疫不全は認められてはおらぬものの, 本症の少なくとも一部は輸血後GVHDであると確診された. 本症は致命的合併症で, 予防が最善の治療であり, 放射後の血液製剤使用が望ましい. 開心術などの大量輸血症例で, 2週間前後に発熱, 紅斑で発症し, 肝障害, 消化器症状, 顆粒球減少から急速に骨髄無形成, 敗血症となる, いわゆる“術後紅皮症”は予後不良の合併症として報告されてきた1)2). |