アブストラクト(36巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開胸手術が胸郭運動に及ぼす影響についての臨床的研究
Subtitle : 原著
Authors : 住友伸一, 人見滋樹
Authors(kana) :
Organization : 京都大学結核胸部疾患研究所胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 9
Page : 1995-2004
Year/Month : 1988 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 開胸操作が胸郭運動に及ぼす影響について, 著者らの作製した胸郭変位計を用い肋間開胸例と胸骨縦切開例で検討した. 肋間開胸例では閉胸時に開胸部の尾側肋間神経を絞扼する疼痛が胸郭運動に及ぼす影響についても検討した. 作製した胸郭変位計は呼吸の際の胸郭の厚みの変化を6ヵ所で同時に実測でき, 胸郭運動に左右差を有する開胸手術症例の胸郭運動の評価に有用であった. 胸郭の安静呼気位から最大吸気位までの変位は, 肋間開胸例の術側では術後1週目には術前の約40~50%まで大きく減少した. 胸骨縦切開例では術後1週目の変位の減少は肋間開胸例の健側のそれと同程度で約60%と軽度であった. 術後の胸郭運動の回復も胸骨縦切開例で良好で術後1ヵ月目には術前との間に差が認められなかったが, 肋間開胸例では回復が遅く術後2ヵ月目でも術前に比べて低下している症例が多かった. 肋間開胸例では閉胸時に開胸部の尾側肋間神経を絞扼する例としない例の間で術後3週目以降の胸郭運動の回復に差がみられた. 術後疼痛は胸骨縦切開例が軽度で, 肋間開胸例では肋間神経絞扼例で痛みが長期間持続する例が多かった. 疼痛と胸郭の変位の関係では, いずれも疼痛の強い例ほど胸郭の変位の減少が大きかった. 以上の結果より開胸操作の胸郭運動への影響は肋間開胸が胸骨縦切開より大きく, その主因として呼吸筋の障害, 胸壁のcomplianceの低下, 術後疼痛が考えられた. 胸骨縦切開は胸郭運動の面で安全な開胸法であり, 肋間開胸では呼吸筋の障害を最小限にとどめ骨性胸郭を温存する努力や閉胸法の工夫が必要であると思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 胸郭変位計, 胸郭運動, 肋間開胸, 胸骨縦切開, 術後疼痛, 肋間神経
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