アブストラクト(36巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 僧帽弁狭窄症における肺血流分布-運動負荷前後の肺血流シンチによる肺血管病変の検討-
Subtitle : 原著
Authors : 河野富雄, 中村和夫
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 9
Page : 2005-2015
Year/Month : 1988 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 僧帽弁狭窄症(MS)における肺血管床病変の進行度と術後改善度を評価するため, 運動負荷前後における肺血流分布を核医学的に検討した. MS37例, 僧帽弁閉鎖不全症(MR)8例, 大動脈弁疾患(ARS)7例及び正常対照群(対照群)8例の計60例を対象とし, 安静時並びに30ワット3分間のエルゴメータ負荷直後に肺血流シンチを行った. 対照群では運動負荷により肺血流分布上/下比(Q(U/L))は軽度ながらも有意に上昇し, また, MR群やARS群でもほぼ同様の反応を示した. 一方, MS群の反応は上昇群と下降群に2分されたが, このうち上昇群には臨床上最重症に属するものと軽症のものの両極端の症例が含まれていることが判明し, 前者におけるQ(U/L)の上昇機序は対照群の反応とは異なると考えられた. そこで, 上昇群を安静時Q(U/L)が1.1より低いI群(13例)と, 高いII群(8例)とに分け, 残る下降群をIII群(16例)として検討し以下の結果を得た. 1)術前の心・肺機能はI群からIII群, 続いてII群の順で重症化した. 2)僧帽弁置換を行った23症例で術後循環諸量の改善度を検討したところ, 肺動脈楔入圧は3群ともよく下降して相互間の有意差が消失した. しかし, 平均肺動脈圧についてはI群とIII群では正常値まで下降したが, II群では依然として高値にとどまった. また, 心係数や肺小動脈抵抗の改善度もII群ではI群やIII群に比べて不良であった. 3)以上, MSは肺血管床病変の進行度からみて3段階に分類し得た. I群, III群では肺間質の変化が可逆性を残しているため僧帽弁修復により心・肺機能の回復が期待できるが, II群では間質の変化が既に器質化しており術後心・肺機能の回復を期待するのは困難と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 僧帽弁狭窄症, 運動負荷, 肺血管床, 肺血流シンチ, 肺血流分布上/下比
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