Abstract : |
大動脈弓部に解離腔(entry)を有する解離性大動脈瘤(弓部解離)症例14例を経験したので, 外科治療上の問題点につき検討した. 弓部解離症例は総数14例で, 解離が弓部に限局した弓部限局型が3例, 上行及び下行への進展を伴った広範型が7例, 下行大動脈にもentryを有するDeBakey IIIb型の合併例が4例であった. 手術は全例脳分離体外循環を併用し, 術式はパッチ再建が1例のみで, 他はwoven dacron graftを用いた人工血管置換術を行った. なお, ARを伴った3例に大動脈弁つり上げ術を行い, open distal anastomosis法を9例に行った. 手術死亡1例病院死亡1例で, 生存12例のうち, 肺出血と術中心筋梗塞をそれぞれ1例に合併したが, 他は合併症もなく良好な経過をたどり遠隔死亡はない. 心停止時間が3時間をこえた3例のうち2例は人工心肺寄りの離脱に難渋した. 術前よりの十分なplanningと, 手技の簡略化により手術時間の短縮を計ることが重要である. entryが末梢寄りの広範型の症例で末梢側吻合部に高率にleakageを生じたが, このような症例では下行大動脈を離断して確実に解離腔の閉鎖固定を行うことが必要と考えられた. |