Abstract : |
僧帽弁狭窄症(MS)77例〔軽度僧帽弁逆流(MR)合併23例を含む〕を対象とし, 術前に断層心エコー法を施行し, MSの形態学的重症度を, 1)僧帽弁前尖の拡張期ドーム形成(DF), 2)弁下組織癒合(SVF)の程度, 3)弁尖肥厚・石灰化(VT)の程度, 4)僧帽弁口面積(MOA)の4項目についてスコアー化し, 総点数をMSスコアーとし, MSの総合的評価を試みた. また, 近年増加しているMS再手術例に多く合併する軽度の僧帽弁逆流(MR)が, 選択術式に与える影響をMSスコアーに加えて考慮し, 術前, 手術々式の予測を行った. 1.VT, SVFスコアーは, 術中肉眼所見によるSellors分類I, II, III型間で有意差を認め, MSスコアーもI, III型間, II, III型間で有意差を認め, MSスコアーはMSの形態学的重症度を表す良い指標と考えられた. 2.MOAを術中計測値と比較すると, r=0.496とよい相関は得られなかったが, 心カテーテル検査からGorlinの式により求めた有効弁口面積とは, r=0.849と高い相関を得た. 3.MSスコアーを術式別に, 僧帽弁交連切開術(OMC)群, OMC+僧帽弁輪形成術(MAP)群, 僧帽弁置換術(MVR)群の3群間で検討すると, 純型MS例では, OMC群とMVR群との間で, 有意差を認めた. 軽度MS合併例では, 特にMVR群で, 純型MS例に比べMSスコアーが低値で, 弁尖及び弁下部狭窄病変は軽度で, 弁口面積は大であった. 4.以上から, MSスコアーをI~IVのGradeに分け, MR合併例はMRの程度に応じ, Gradeを, I又はII上げることとした. その結果, 対象77例中Grade I, IIの68%がOMC, Grade IVの82%がMVRとなり, 本法はMSの手術々式予測に有用であった. |