アブストラクト(36巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 後天性心疾患における開心術後多臓器不全の検討
Subtitle : 原著
Authors : 久冨光一, 磯村正, 青柳成明, 平野顕夫, 西義勝, 小西浩, 安藤文彦, 小須賀健一, 大石喜六, 戸嶋裕徳*
Authors(kana) :
Organization : 久留米大学医学部第2外科, *久留米大学医学部第3内科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 9
Page : 2106-2111
Year/Month : 1988 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 後天性心疾患術後, 多臓器不全に陥った症例(生存例17例, 死亡例22例, うち剖検例15例)を対象に, 比較検討を行った. 対象症例の術後の挿管日数は, 生存例16.0±6.8日, 死亡例17.9±6.2日で差を認めないが, 術後胸部X線撮影にて明らかな肺炎像を有するものは, 生存例で5例(29.4%), 死亡例で17例(77.3%)と, 死亡例において高率であった(p<0.01). Respiratory Index(RI)と気管支肺炎の程度を比較すると, 広範囲病変を認めるに従い, RIも上昇する傾向を示していた. 肝機能については, 術後の総ビリルビン(T.Bil)最高値が, 生存例で4.1±2.6mg/dl, 死亡例で11.3±3.5mg/dlと死亡例が有意に高く(p<0.01), しかも術前ICG 15分値高値例に, 術後のT.Bil高値例が多く認められた. また術前ICG 15分値は, 死亡例の組織学的検索で, 循環障害に伴う, うっ血による変性度とよく合致していた. 腎機能をみると, 術後BUN最高値は, 生存例49.4±16.5mg/dl, 死亡例114±23.2mg/dlと死亡例が高値を示し(p<0.01)たが, 血清クレアチニン(SCr)最高値は, 生存例3.9±1.4mg/dl, 死亡例3.5±1.2mg/dlと差を認めなかった. 血液透析を施行された剖検例においても, 非可逆的な腎の組織変化を有するものは1例と少なく, 適切な透析時期の再検討が必要であり, 血行動態に影響の少ない利点を考えると, 成人においても, 血液透析より腹膜透析の積極的な利用を考慮する必要があるものと思われた. また術後DIC(disseminated intravascular coagulopathy)発症例は, 重篤な気管支肺炎合併例に認められ, 今後, 術後急性期の心不全対策と同様長期挿管患者の感染対策, 重症例に対する抵抗力向上をふまえた栄養管理の検討が, 必要であると思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 多臓器不全, 感染対策, 組織学的検索, 腹膜透析
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