Abstract : |
僧帽弁狭窄症の外科治療上, 左房内血栓に起因する血栓塞栓症は, 重篤な合併症である. そこで開心術を施行した僧帽弁狭窄症77例について術中左房内血栓陽性25例を陽性群, 残り52例を陰性群として術前血栓塞栓症と外科治療の予後について検討した. 術前血栓塞栓症の合併率は陽性群36.0%, 陰性群11.5%で有意差(p<0.05)を認めた. 予後は両群とも病院死はなく, 術前, 術中の脳梗塞の後遺症を, 陽性群20%, 陰性群3.8%に認めた. 次に術前左房内血栓を診断する方法としてX線CT法を施行した77例中51例について, その有効性を検討した. 術中左房内血栓陰性34例中33例(97.1%)が術前に診断可能であり, 陽性17例中16例(94.1%)が術前血栓の有無, 部位及び大きさの診断が可能であった. 全体では96.1%の診断率であった. 診断し得た血栓の大きさは左心耳内では1g以下の少量のものから左房腔内では1g以上のものであった. しかし左房腔内壁在性の0.2gの白色血栓は診断不可能であった. 僧帽弁狭窄症において左房内血栓陽性群は術前血栓塞栓症の危険が高く, 手術後もその後遺症を残すことが多く, 早期診断と手術が望まれる. 術前診断法としてはX線CT法が有効であり, 本症においてはまずX線CT法による左房内血栓の検索を行い, 陽性例は可及的早期手術が必要である. |