Authors : |
佐々木昭彦, 杉本智, 高木伸之, 井上紀雄, 原田英之, 横山秀雄, 岡本史之, 数井暉久, 安倍十三夫, 小松作蔵 |
Abstract : |
左室肥大を伴った大動脈弁置換術症例に対して, slow calcium channel blockerの1つであるDiltiazem(DTZ)を5μg/mlの濃度でblood cardioplegia(BCP)に添加(I群, n=22)して, DTZ非投与BCP(II群, n=27)と比較検討した. 左室1回仕事量(LVSWI)は, I群が術前32.9±12.5gm/m2で術後4時間目に45.0±13.8gm/m2と有意に増加し, 術後8, 16時間目も術前より有意に高値を示した. II群ではLVSWIの増加はみられなかった. 心係数(CI)はI群が術前2.47±0.61l/min/m2が術後4時間目に3.44±0.72l/min/m2と有意に増加した. II群も同様に術前2.93±0.72l/min/m2から術後4時間目に3.43±0.72l/min/m2と有意に増加し, 両群とも術後8, 16時間目で術前より有意に高値を示した. AVR単独例の術後1日目のCPK-MB値はDTZ添加群21.7±8.7IU/l, 非添加群35.7±9.4IU/lとDTZ添加群が有意に低値を示した. また, I群では術後, 1例に徐脈性心房細動が, II群では2例に心室性頻拍, 1例に二段脈がみられた. 両氏とも手術近接期の冠動脈スパスム(PCS)の発生はみられなかった. このようにDTZ添加群では術直後CIの有意な増加とともにLVSWIも有意に増加し, DTZ-BCPが術直後の左室機能の回復を助長した. AVR単独例ではDTZ添加群が酵素学的にも有利に働いた. また, DTZ添加群ではPCSとともに術後心室性不整脈の発生を認めなかった. |