Abstract : |
国立がんセンターで手術された65例の胸腺上皮細胞に由来する腫瘍を, 同センター病理部の基準に従って分類して, その臨床像の違いを検討した. 腫瘍は, 組織学的に良性のものを胸腺腫とし, それを手術時の所見で非浸潤性胸腺腫(33例)と浸潤性胸腺腫(18例)に分け, 組織学的に悪性のものは胸腺癌とし, それを, 更に, 扁平上皮癌(12例)と未分化癌(2例)に分けた. このような分類によって症例の臨床像を検討して以下の結論を得た. 1)病理学的分類による悪性度の違いによって, 性, 年齢別の発生頻度は異なる傾向がみられた. すなわち, 2)悪性度が低いものは女性に多く, 高いものは男性に多く発生し, 3)年齢では分類上の悪性度が高くなるにつれて高齢者により多く発生する傾向がみられ, この傾向は, 特に女性において明らかであった. 4)悪性度が高くなるにつれて有症状で, しかも進行した病期で発見される症例が増加し, 従って, 合併切除や非切除の対象となる症例も増加している傾向がみられた. 5)またM.G.の合併や胸膜播種は, 胸腺癌には全く認められておらず, 胸腺腫と胸腺癌には生物学的特性の違いがあるように思われた. 6)予後は非浸潤性では良好で未分化癌では特に不良であったが, 浸潤性と扁平上皮癌のあいだには予後の差がみられなかった. しかし, 7)再発形式では浸潤性より扁平上皮癌の方がより早い時期に, より遠隔臓器に再発する傾向がみられるので, もっと症例が重なれば予後にも差がみられるようになることが予想された. 8)放射線に対する感受性は, 未分化癌に比べ浸潤性や扁平上皮癌では高い傾向にあった. |