アブストラクト(36巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : コリンズ液を用いた単純浸漬心保存法における心停止法-心筋保護液使用の重要性に関する生化学的検討-
Subtitle : 原著
Authors : 河野博之, 戸嶋良博, 中村祐一郎, 益田宗孝, 麻生俊英, 三谷淳夫, 深町清孝, 川内義人, 田中二郎, 徳永晧一
Authors(kana) :
Organization : 九州大学医学部心臓外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 10
Page : 2229-2232
Year/Month : 1988 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 心臓をはじめ摘出臓器の単純浸漬保存法では, コリンズ液に代表される細胞内イオン組成液が有用である. しかし, この液のイオン組成は, 開心術時使用される心筋保護液と大きく異なるため, 心停止のためにこの液を用いるには危険があると考えられる. そこで, 摘出ラット心を用いて以下の群につき生化学的検討を行った. CP群;Cardioplegia(CP)液2分間注入により心停止とした群, C群;Collins(C)液2分間注入により心停止とした群, CP-C群;CP液1分間注入にて心停止とした後, のちのC液による保存の準備としてC液を1分間注入した群. C群において, C液注入中の冠血管抵抗は著しく増大し, この間の冠灌流液へのCreatine kinase流出量は, 同群で他2群に比し有意に高値であった(C群;46.0±6.8mIU/heart/2min, CP群;19.2±4.8, CP-C群;23.7±4.7, p<0.05). 液注入直後の心筋内Creatine phosphateは, C群で他2群に比し有意に低値であり(C群;19.3±2.0μmoles/gm dry weight, CP群;29.0±1.3, CP-C群;27.8±1.8, p<0.05), 乳酸は, C群で有意に高値であった(C群;35.7±4.8μmoles/gm dry weight, CP群;17.2±3.4, CP-C群;14.1±2.3, p<0.05). 以上より, C液を心停止のために使用すると心筋虚血障害を生じること, 及びCP液にて心停止としたのちC液を使用することにより心筋障害が防止されることが明らかとなった. 故にC液を心保存に応用する際は, まずCP液にて心停止としたのちに使用すべきである.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 単純浸漬心保存法, 心停止法, コリンズ液, 心筋保護液
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