Abstract : |
両側多発転移性肺腫瘍14例に対し, 胸骨縦切開法による両側肺手術を施行した. 同時期に施行した片側単発あるいは片側多発転移性肺腫瘍16例と比較検討した結果, 以下の結論を得た. 1)肺転移の個数, 両側性あるいは片側性, 及び原発巣手術から転移巣手術までの間隔などは, 予後には差を認めない. 2)肺転移巣手術前の化学療法著効例は, 予後良好で, 転移巣の切除標本の病理検査で完全壊死像を呈しているものもある. 3)AFPやHCGなどの腫瘍マーカーの推移も予後を判定する重要な因子である. 両側多発転移性肺腫瘍の外科療法の意義・適応に関し, 各施設間で一定の見解を得るに至っていないが, これらの結果より以下のように考察している. a)手術方法は胸骨縦切開法による両側開胸が優れている. b)患者の状態が良好で, 原発巣が手術により切除し得ると判定すれば肺転移巣と同時一期的に手術を施行することは可能である. c)化学療法が奏効する睾丸腫瘍などでは, 肺転移巣に加えて後腹膜のリンパ節転移に対しても一期的な手術は可能である. 胸骨縦切開法による肺転移手術は, 呼吸器合併症も少なく, 創痛も比較的軽度で, 術後の肺機能の回復も早い. 従って, 開腹を含む他の手術と同時に一期的に施行することも可能である. 更には思わぬ肺転移巣が発見される機会も増加し, 優れた方法と思われる. |