| Abstract ： |
超音波は循環器疾患において診断に限り応用されており, 生体作用は明らかでなく治療的には応用されていない. 今回, われわれはラット摘出灌流心を用いて超音波の心機能, 特に虚血心筋に対する影響を検討した. 実験は実験1, 実験2に分けて行った. 実験1では超音波非照射群（I群）, 照射群（II群）に分けた. Working heart法で好気的灌流を行い虚血前値とした後, 虚血を誘発し10分間灌流し, 次いで好気的再灌流を行い虚血前値と比較し回復率を算出した. 超音波を虚血10分間, 再灌流20分間, 心拍に同期させて照射した. 心機能は, その回復率を百分率で求め平均±S.D.で表示した. Cardiac output（CO）の回復率はI群17.7±13.3%, II群61.9±37.4%を示し, I群に対してII群は有意な改善を示した（p＝0.018）. coronary flow（CF）の回復率はI群27.0±20.0%, II群61.8±26.3%を示し, I群に対してII群は有意な改善を示した（p＝0.049）.実験2では, 超音波照射（Ul）, 心停止液へのVerapamil（Ve）の添加の有無によりC群〔Ul（－）, Ve（－）〕, Ul群（〔Ul（＋）, Ve（－）〕, UlVe群〔Ul（＋）, Ve（＋）〕, Ve群〔Ul（－）, Ve（＋）〕に分けた. Working heart法で好気的灌流下, 心停止液を用いて25分間の心停止を得, 次いで好気的再灌流を行った. 超音波照射は心停止中に連続波で行った. COの回復率は, C群に対してVe群, Ul群, UlVe群は（p＝0.007）良好な回復を示し, 時間的推移が処理間で有意に異なった. CFの回復率は各群間で有意差は認められなかった. 以上より得た結論は, 1)虚血時に超音波照射を行った群は超音波非照射群に比し再灌流時に良好な心機能の回復を示した. 2)CFの回復率は心筋保護液使用下では差が認められなかったが, 高度虚血時では超音波照射群のほうが良好であった. 3)虚血時の超音波照射の再灌流時心機能に対する作用はVerapamilと拮抗しなかった. 4)以上より虚血時の超音波照射は再灌流時の心機能にとって有用であることが示唆された. |
