アブストラクト(36巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 人工心肺灌流時における赤血球変形能の障害とその防止に関する研究
Subtitle : 原著
Authors : 明元克司, 上山武史, 湖東慶樹, 山本恵一
Authors(kana) :
Organization : 富山医科薬科大学第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 11
Page : 2353-2362
Year/Month : 1988 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 人工心肺灌流(以下CPB)時の血液障害につき赤血球の面より赤血球変形能に着目し, CPB中の赤血球変形能の経時的変化を検討すると共に, 術後合併症の発生とCPB終了時の赤血球変形能との関連を比較検討した. また, CPB中の赤血球変形能の障害防止を目的にイヌ灌流実験を行ない, prostaglandin E1及びI2誘導体の投与効果を検討した. 対象は1985年5月より1986年10月までに心大血管の手術で, CPBを施行した27例である. 赤血球変形能の測定は, Reidのmicrofilter法変法を用い, red cell filtration rate(RFR)を算出した. RFRはCPB前値78.5±12.6μl/secであった. その後CPB中は30分73.9±16.6, 60分72.0±16.6, 90分62.7±17.1(p<0.01), 120分59.6±26.0(p<0.01), 150分59.6±21.5(p<0.01), 180分61.3±17.5(p<0.05)となり灌流時間60分を境にCPB前値に比べ有意に低下した. また個々の症例において, 肝, 腎, 心機能障害の発生はCPB終了時RFRが低値かあるいはCPB前値に比べ20%以上低下した例に多かった. 一方, 長時間体外循環施行例においてもRFRの低下が軽度の例では術後機能障害の発生は少なかった. イヌにおける灌流実験において, prostaglandin E1及びI2誘導体の投与は, CPB中のRFRの低下を完全に防止しえた. 赤血球変形能の低下は臓器微小循環の障害を引き起こし, 組織酸素供給を低下させるため, CPB中にRFRを測定することは, 組織微小循環障害の発生の有無を判断し, 術後合併症発生予知に有用な手段である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 人工心肺灌流, 赤血球変形能, 組織微小循環, 術後合併症, prostaglandin
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