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塩酸パパベリンの冠動脈拡張作用に着目し, ラット摘出心を使用してcardioplegia液に塩酸パパベリンを添加して, その心筋保護効果について検討した. Krebs Henseleit BufferまたはSt.Thomas液に塩酸パパベリン非添加及び8mg/l, 16mg/l, 20mg/l, 24mg/l, 32mg/l, 40mg/l, 80mg/l添加液をcardioplegia液として作成し, 常温（20℃）, 低温（4℃）, 高カリウム（24mEq/l添加）で30～60分間の心筋虚血後, 心機能回復（冠灌流量, 心拍出量, 心拍数）を検討した. 塩酸パパベリン8mg/l添加では非添加群との有意差は無く, 32mg/l以上では房室ブロックが出現し心機能回復は不良となったが, この範囲内の添加群ではcardioplegia液の冠灌流量は非添加群に比して有意に増加した（p＜0.001）. この効果はcardioplegia液として使用する低温下（4℃）でも効果的であり, 低温下におけるrapid cooling shockや高カリウムによる冠血管収縮を軽減できた. 心拍再開後の心機能回復も良好となり, 特に20mg/lの塩酸パパベリン添加群が, cardioplegia時の冠灌流量（非添加群の130～180%）, 心拍再開後の心機能回復率（心筋虚血60分間で再灌流下60分心拍出量：非添加群21%, パパベリン20mg/l添加群100%, 同冠灌流量：32%, 100%）から至適濃度と考えられた. しかし, St.Thomas液への添加では心機能回復率は非添加群に比し不良であり, 添加基質液の選択には検討を要した. |
