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人工弁置換術後の血栓塞栓症の予防には, warfarinによる凝固因子抑制に加えて, 血栓形成の初期の段階に重要な役割を果たす血小板機能を抑制しておくことが必要である. 抗血小板薬の術後早期における血小板機能, 血液凝固に対する影響についての報告はみられるが, 比較的長期投与の成績を比較検討した報告は少ない. そこで人工弁置換術を行い, 外来管理している45例についてwarfarinとdipyridamole 300mg/日投与群と, warfarinとticlopidine 300mg/日投与群の2群における血小板機能, 血液凝固能, 血液像, 肝, 腎機能等に及ぼす影響について, 1985年1月より1986年10月まで, 22カ月にわたり検討したところ, 次の結果を得た. 1.血小板の機能抑制効果はADP 5μM, Collagen 2μg/ml凝集からみて, ticlopidineがdipyridamoleより優れていた. 2.肝機能, 腎機能への影響は, dipyridamole, ticlopidineとも長期投与にて認めなかった. 3.血液, 血液像への影響はdipyridamole, ticlopidineとも長期投与にて認めなかった. 4.warfarinと抗血小板薬の併用投与によって, この期間中血栓塞栓症発生はみられなかった. 以上の結果から, 抗血小板薬であるdipyridamoleとticlopidineは共に, 長期投与においても安全性に優れ, とりわけticlopdineは血小板凝集能抑制効果が強く, warfarinとの併用投与により, 人工弁置換術後の抗血栓療法剤として, 長期投与に使用できるものと考えられた. |
