アブストラクト(36巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心サーモグラフィーによる心筋虚血領域の診断に関する実験的検討
Subtitle : 原著
Authors : 安達秀雄, 尾本良三
Authors(kana) :
Organization : 埼玉医科大学第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 11
Page : 2408-2416
Year/Month : 1988 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 心臓にサーモグラフィーを使用し, 心筋虚血領域の診断に対する心サーモグラフィーの有用性について実験的に検討した. 初めに雑種成犬8頭を使用し, 開胸下に左前下行枝(LAD)を基部で遮断し, 虚血領域の形成を4時間にわたり心サーモグラフィーで観察した. 心臓は周囲組織より識別可能であり, LAD遮断直後より灌流領域の温度低下が始まり, 遮断6分後には虚血低温領域中心部と周囲健常心筋部との温度差は1.94±0.46℃(平均±S.D.)に達した. 虚血低温領域は周囲健常心筋と明瞭に区別可能で, 1℃以上温度が低下した領域は, 露出された心臓前面の面積の15.6±5.4%であった. LAD遮断10分以後は4時間にわたる観察中, 健常部と低温領域との温度差及び虚血低温領域の面積には有意な変動を認めなかった. 次いで10頭の雑種成犬を使用し, LAD遮断4時間後の心サーモグラフィーを記録し, 直ちに心臓を摘出して心尖部より1cmごとの心筋スライスを作製し, トリフェニールテトラゾリウムで染色して肉眼的梗塞領域を同定し, 虚血低温領域と対比した. 各スライスごとに心臓の横径に対する梗塞心筋領域と温度低下領域とを比較し, 相関関係についてt検定したところ, 有意であった(p<0.05). 心サーモグラフィーによりLAD遮断時の心筋虚血領域の可視化が容易に可能であり, またこの虚血低温領域は遮断4時間後の梗塞領域と有意な相関をもっていた. サーモグラフィーの心臓への応用は, 心筋虚血に関する研究を進める上で, ユニークで有用な手段となりうることが示唆された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : サーモグラフィー, 急性心筋梗塞, 虚血低温領域, トリフェニールテトラゾリウム染色
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