Abstract : |
近年, 心・肺・肝・腎・脳などの複数の体内重要臓器が, 同時, あるいは連続的に機能不全を起こしてくる, いわゆる多臓器不全(MOF)が開心術後の問題となってきている. 今回, 各種後天性心疾患に対して開心術を行った80例のうち, 術後MOFに陥った12例を対象として, その予後を決定する因子について検討を行った. 結局, 12例中8例を救命し, 4例を失った. これら12症例のうち, 障害が4臓器以下の症例は全例救命しえた. 更に5臓器以上に及ぶ重篤なMOF例でも, 重症感染症を合併しない限り救命しえた. 死亡例4例は全例において, 術後に重症感染症を併発しており, 更に, このうち3例は術前より糖尿病を合併していた. これに対し, 救命しえた症例は全例において糖尿病を合併していなかった. 術前病悩期間別に検討した結果では, 救命しえなかった症例はすべて病悩期間が20年以上の長期にわたるものであった. 以上より, 後天性心疾患の開心術後MOF例の救命には, 感染症に対する対策が非常に重要である. このためには術前における糖尿病合併の有無の検索と, 糖尿病合併例には, 術中, 術後は当然であるが, 術前より十分に糖尿病をコントロールすることが極めて重要と考えられる. |