Abstract : |
開心術の有力な補助手段となってきた超低体温低流量灌流法(Hypothermic low flow perfusion technique以下LF)の脳に及ぼす効果, 生理学的意義を明らかにするために20頭の雑種成犬を用いて実験的に脳循環, 脳代謝, 脳波の面から循環停止法と比較しながら検討した. 体外循環を用い18℃の超低体温とし, 20ml/kg/minの灌流量で2時間灌流する群(I群), 60分間循環停止する群(II群)の2群に分けた. 両群とも中心冷却, 中心加温は70ml/kg/minの灌流量で行った. I群:LFに移行すると脳血流量は減少したが灌流量の脳血流分画は増大し脳血流は比較的よく保たれていた. 脳動静脈血酸素含量較差は増大したが, 生理的範囲内の変動と考えられ, 脳酸素消費量は有意な変化を示さず一定であり, またLF中においても脳において嫌気性代謝の亢進もなく良好な酸素摂取を示した. 脳波は18℃にて平坦となったが復温により冷却開始前の状態に回復した. II群:循環停止解除後, 脳血流量の減少と脳酸素消費量の減少を認め, 明らかな酸素負債に加え高い乳酸値を示したことより嫌気性代謝の亢進が考えられた. 以上の成績よりみて, 18℃, 20ml/kg/minで2時間の超低体温低流量灌流法は60分間の循環停止法に比較して良好な脳循環, 脳代謝を保つことができ, より安全性の高い補助手段であると考えられた. |