Abstract : |
症例は36歳男性. γ-streptococcusを原因とする感染性心内膜炎による大動脈弁閉鎖不全症で, 術前に心血管造影を行うことなく緊急手術を行った. 術前の心エコー図法では大動脈弁の破壊されていることは診断し得たが, 弁輪部への感染の波及の有無は不明であった. 術中断層心エコー図法で大動脈基部を細かくscanして検索したところ, 大動脈弁は左冠尖と右冠尖の間の交連部が癒合した二尖弁であることが疑診された. 感染の状態は, 無冠尖の中央部が穿孔してvegitationをつけており, 無冠尖直下の左室側にあたる僧帽弁前尖の基部に膿瘍の形成が確認された. この心エコー図所見は手術により確認され, 感染巣のdebridement・大動脈弁置換術を行い, 術後に感染の再燃・弁周囲逆流を合併することなく治癒した. 大動脈弁輪部膿瘍の術中心エコー図所見及びその有用性について報告した. 大動脈弁の感染性心内膜炎(IE)は, 感染が弁尖のみにとどまらず弁輪周囲へ進行し, 膿瘍形成, 周囲の心房・心室への穿通, 心外への穿孔, あるいは大動脈壁と左心室心筋との連続性が感染によって破壊されることがある1)~7). |