Abstract : |
後天性心疾患50例を対象とし, 体外循環下開心術時のアラキドン酸カスケードの変動などについて検討し以下の結論を得た. (1)体外循環中の血漿TXB2は上昇したが, これは弁疾患においてより著明であった. PGE1により体外循環中のTXB2の上昇はやや少なくなった. (2)体外循環中の血漿6-Keto-PGF1αは上昇したが, この上昇の程度は虚血性心疾患群が弁疾患群に比して軽度であった. PGE1の投与によっても, 6-Keto-PGF1αの上昇がみられた. (3)TXB2/6-Keto-PGF1α比は体外循環の開始で下降し, PGE1の投与によってこの下降はより著明となった. 従って, 体外循環中のPGE1の投与は, 凝固系コントロールの面から有効な補助手段と考えられた. (4)PGE1の投与によって, 血小板凝集抑制作用及び末梢血管拡張作用が十分にみられ, 体外循環中にPGE1を投与することは末梢循環不全防止の面からも有効であると考えられた. (5)体外循環中のPGE1の投与によりヘパリン量は削減でき, 大量のヘパリン投与に起因する合併症の発生を予防できる可能性があると考えられた. (6)本研究ではPGE1を回路充填液中に50ng/ml及び体外循環中に50ng/kg/min投与したが, initial dropなど血圧への影響が大きくなり過ぎたこと, そのため利尿効果を十分に得ることができなかったことなどから投与量に再考を要すると考えられた. |