Abstract : |
Fontan手術を施行した29例を対象に心血管造影法を用いて, 左右心房容積を測定した. 右房-右室あるいは右房-肺動脈吻合を行った三尖弁閉鎖症14例をI群, 三尖弁閉鎖症以外の複雑心奇形に対して, 肺静脈血が左右房室弁あるいは共通房室弁を通過するよう右房をパッチにて斜めに分割(oblique partition法)し, 右房-肺動脈吻合を行った12例をII群, 右側房室弁閉鎖と右房-肺動脈吻合を行った3例をIII群とした. 術後の右房最大容積は, I群120±55%(対正常:以下同様;平均±標準偏差), II群66±19%, III群107±5%であり, II群の右房最大容積は小さく, 全例が予測正常値以下であった. 右房駆出率, 心拍出量はI, II群間に統計学的有意差がなく, 両群とも右房最大容積と心拍出量, 右房駆出率と心拍出量は相関しなかった. 術後の左房最大容積は, I群124±36%, II群95±40%, III群84±52%で, I, II群間に統計学的有意差はなく, 左房最大容積は術後の心拍出量と相関する傾向にあった. 今回の研究から, Fontan手術における左右心房の積極的役割は少なく, oblique partition法により術後の右房容積が小さくなること自体, 術後の血行動態にとって何ら不利な点ではないことが判明した. 以上よりoblique partition法を施行する場合には, 心房内パッチのbulgingによる肺静脈血流入障害や右側房室弁流入障害を避けるため, 右房内の狭窄を作らない程度に新しい右房腔をできるだけ小さくすることが重要であると考えられた. |