アブストラクト(36巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 胸部下行大動脈瘤手術における一時的バイパス法の検討-体性感覚誘発電位(SEP)を用いた術中脊髄虚血予防に関する実験的研究-
Subtitle : 原著
Authors : 関根智之, 阿部忠昭
Authors(kana) :
Organization : 秋田大学医学部心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 12
Page : 2598-2607
Year/Month : 1988 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 胸部大動脈瘤手術時の脊髄障害を予防する目的で, 胸部下行大動脈単純遮断時及び補助手段として一時的バイパス法を用いた場合の循環動態の変化と体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potential:SEP)を用いた脊髄機能の実験的検討を行い, 以下のような結論を得た. 1)下行大動脈単純遮断時には遮断末梢側血圧の急激な低下22.0±4.6mmHgとともに全例で15分以内にSEPの消失を来し, 30分間の遮断後に遮断解除したが, 5頭中1例でSEPは回復しなかった. 2)下行大動脈遮断範囲内に脊髄循環に対するcriticalな肋間動脈がない例において, 大動脈弓から腹部大動脈間に設置した一時的バイパス流量を変化させSEPを指標とする脊髄機能を検討したところ, SEP消失を来した例はバイパス流量が心拍出量の45%以下, 遮断末梢側血圧が45mmHg以下に集中しているのが認められた. 3)補助手段として一時的バイパス法を用いた場合, 常温群と30℃程度の軽度低体温法併用群との間にはバイパス流量と末梢側血圧とを指標としたとき低体温群における有意な脊髄保護効果を認めるには至らなかった. 以上の結果より, 胸部下行大動脈瘤手術に際して, 下行大動脈の単純遮断時には速やかに脊髄虚血を来し, 遮断時間が30分を超えると不可逆性の脊髄障害が発生する頻度が増すこと, 及び大動脈遮断範囲に脊髄循環に対するcriticalな肋間動脈がない場合においても脊髄虚血発生防止には適正な末梢還流量及び血圧が維持することが不可欠であり補助手段として一時的バイパスを用いた場合のSEPを消失させないためのバイパス流量は心拍出量の45%程度, 遮断末梢側血圧は50mmHg程度が最低必要であることが判明した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 胸部下行大動脈瘤, 術後下肢対麻痺, 一時的バイパス法, 体性感覚誘発電位
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