アブストラクト(36巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 後天性弁膜症に合併した三尖弁閉鎖不全症の術前評価と術式選択の検討
Subtitle : 原著
Authors : 岡部学, 高尾仁二, 下野高嗣, 田中國義, 新保秀加, 水谷哲夫, 矢田公, 干種弘章*, 湯浅浩, 草川實
Authors(kana) :
Organization : 三重大学医学部胸部外科, *三重大学医学部救急部
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 12
Page : 2608-2614
Year/Month : 1988 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 超音波パルスドップラー法を用い, 後天性弁膜症に合併する三尖弁閉鎖不全症(以下TR)の術前逆流様式を分析し, その結果を手術前後のTRの変化, 術中所見と比較検討し, TRの発生様式と手術々式選択に検討を加えた. パルスドップラー法によるTRの評価は, 逆流シグナルの到達方向により, 心房中隔方向をa型, 右房中央部をb型, 右房外側方向をc型とし, 各々一領域の逆流にとどまるものを限局型, 二領域以上にわたるものを広範囲型とした. また, 手術後の三尖弁口面積の指標として右室流入血流速度半減時間(Pressure Half time:PHT)も測定した. 1)連続する後天性弁膜症137手術症例中51例37%に術前TRを合併していた.合併TR51例中37例73%はa, 又はa+b型で逆流方向を心房中隔側に向けていたが, 術中所見の得られた22例全例に三尖弁の器質的変化は認めず, TRの主原因は弁輪拡大によるものであった. 一方, 逆流方向を右房中央部から外側に向けていたb, 又はb+c型TRは, 11例22%に認められたが, 本型TRにおいては術中所見の得られた4例中2例50%と高率に弁葉の器質的変化を合併していた. 2)合併TR51例中29例60%と最も高率に認められたa型TRに対し弁輪形成術としてのKay法は良好な逆流制御能を示したが, 広範囲型TRに対しては術後3度以上のTR残存率80%(4/5)とその修復能は不良であった. 3)弁輪形成術としてのCarpentier法においては広範囲型TR 4例を含む11例全例において逆流は十分に制御されていた. 4)術後のPHTは, Kay法152±38msec, Carpentier法111±23msecとKay法が有意に高値を示したことより, Kay法においては過縫縮による弁狭窄の発生に注意を要すると考えられた. 5)後天性TRに対しては, 逆流度のみならず逆流様式も同時に評価することが, TRの発生様式の推定及び術式選択上有用である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 三尖弁閉鎖不全症, 弁輪形成術, Pulsed Doppler法, 心エコー図
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