Abstract : |
左肺門部照射21年後に照射部に肺癌が発生し, 左肺摘除術を行った症例を経験したので報告する. 42歳男性, 21歳時健診で左肺門部に腫瘤影発見, 精査をうけるも確定診断がつかず, 開胸術を行った結果, 塊状に腫張したリンパ節が肺動脈と強固に癒着していたので, 摘出は控え, リンパ節生検に止めた. 組織はreactive hyperplastic lymphadenitisであったが術後腫瘤影が増大するため6,000radsの照射を行い, 陰影は縮小した. 10年後より血痰が始まり徐々に増強, 17年後には気管支拡張所見を呈し, 21年後には喀血, 左無気肺となり, 細胞診, 生検で扁平上皮癌と判明, 帝京大学第1外科で左肺摘除術を行った. 開胸術後6,000rads放射線照射治療により肺癌が発生し肺摘除術を受けた症例はまれであり, その手術, 病理所見を文献的考察を含めて検討した. 放射線暴露による肺癌発生に関しては従来より多くの報告がみられるが, その多くはウラン鉱山従業員や, 広島,長崎の原爆被暴者の晩期合併傷害としての長期微量暴露による疫学的調査及び胸腔外疾患の照射治療によるものであり, 胸腔内疾患に対する治療として短期大量照射による肺癌発生の報告は少ない. |