アブストラクト(37巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心保存における心筋保護液の有効性と空中懸垂保存法に関する実験的研究
Subtitle : 原著
Authors : 上田敏彦, 井上正
Authors(kana) :
Organization : 慶応義塾大学医学部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 1
Page : 25-33
Year/Month : 1989 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 4℃生食浸漬心保存法(浸漬法)における心筋保護液(セントトーマス液, STS)冠動脈内投与の併用効果, 及び心筋浮腫抑制を目的とした4℃空中懸垂保存法について, 成犬の摘出心を用いて検討した. 実験1では浸漬法のみ(浸漬群)・浸漬法+STS 2時間毎投与(浸S群)・空中懸垂法+STS 2時間毎投与(空S群)の3群につき, 9時間の保存中の変化を観察した(各群n=8). 心筋内pHの経時的低下率は浸漬群0.14/h・浸S群0.16/h・空S群0.13/hと群間の差は認められなかった(p=0.18). 心筋ATPは7時間までは浸S群(7時間で23.8±2.8μg/mg(protein)・空S群(同24.7±2.7μg/mg)とも浸漬群(同18.1±3.4μg/mg)に比べ良好に維持された(p=0.05). 9時間保存後の心筋水分量の増加は浸漬群0.8%(NS)・浸S群3.1%(p=0.001)・空S群1.9%(p=0.02)であったが, 浸漬群と浸S群の差のみ有意であった(p=0.004), 実験2では前述の3群を8時間保存後供血犬により再灌流し(各群n=5), 浸漬保存1時間で再灌流した対照群を含め(n=6), 3時間の観察を行い心機能を比較した. 左室バルンにより測定したEmaxの最大値は, 対照群10.4±2.2mmHg/ml・浸漬群6.8±1.0mmHg/ml・浸S群8.3±1.8mmHg/ml・空S群8.8±1.3mmHg/mlと対照群と浸漬群の差は有意で(p=0.01), 8時間保存の3群間では浸漬群と空S群の差が比較的有意であった(p=0.06). STS投与は浸漬保存心のATP維持には有効であるが, 心筋水分量の増加をもたらす. 空中懸垂保存法はこれを軽減し, 再灌流後の心機能も改善し得ることが示された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心保存法, 生食浸漬保存, セントトーマス液, 空中懸垂保存法
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