Abstract : |
症例は両下肢冷感を主訴とする43歳の男性で, 入院時, 上肢血圧は182/92mmHgと上昇しており, 下肢との間に約70mmHgの圧較差を認めた. 大動脈造影にて, 下行大動脈は左鎖骨下動脈分岐部直下よりいったん著明に拡大した後, 次第に狭小化し, 第8, 9胸椎間に著明な狭窄を認めた. 弓部から下行大動脈の全域に著しい石灰化がみられ, 大動脈炎症候群による下行大動脈瘤及び異型大動脈縮窄症と診断した. 本例に対して上行-腹部大動脈間に非解剖学的バイパス(20mmの人工血管使用)を作成し, 瘤中枢側(左鎖骨下動脈分岐部)に松田医科製のpermanent clampを装着した. 左鎖骨下動脈の血行再建をあわせ行った. 術直後より上半身の高血圧は消失し, 術後カテーテル検査では上行-腹部大動脈間に圧較差を認めなかった. 大動脈造影にて瘤曠置部は完全に血栓化しており, 良好な結果が得られた. 大動脈炎症候群は本邦に特異的に多く, 外科的治療が可能な症例も少なくないが, その病像は多彩であり, 病変が広範囲にわたる場合も多く, 外科治療の適応や術式の選択には慎重を要する1). |