Abstract : |
開心術体外循環(cardiopulmonary bypass;CPB)における補体活性を血中anaphylatoxinを中心として, 酸素加装置の種類;気泡心肺(bubble oxygenator;BO), 膜型肺(membrane oxygenator;MO), 更に同種血充填の多寡により分類し, 比較検討した. 血中C4a値は, CPB中, BO群においてやや漸増傾向が認められたが, MO群においては, ほぼ定常値で推移した. 血中C3a値は, 両群ともCPB中経時的上昇が認められたが, MO群ではその上昇傾向がCPB以後60分で鈍化したのに対し, BO群では, 直線的増加傾向をとっていた. 血中C5a値は, 全般的に低値にとどまったが, 群別比較ではBO群がMO群よりCPB中やや高値を示した. 次に, カニクイザル(Macaca fascicularis)を用い, イ)O2気泡処理自家血, ロ)nylon接触自家血, 又は, ハ)微小酸素気泡の大動脈内持続注入を行った. その結果, O2気泡処理血注入群では, 著明なC4a値の上昇とC3a値の経時的上昇を認めたのに対して, nylon接触血注入群では, C4a値の上昇を伴わぬC3a群の上昇を認めた. なお, 微小酸素気泡注入群ではC3a, C4aともに不変であった. 以上の臨床, 実験結果より, 血中anaphylatoxinの動態からみたMO群の補体活性経路は, alternative pathwayが優位であると考えられたが, BO群ではclassical pathwayが強く関与することが示唆された. 更に大量同種血充填体外循環においては, BO群はMO群に比しC4a値の上昇が著しかった. このことからBO群のclassical pathwayの活性化には充填同種血の多寡も強い影響を及ぼしていると考えられた. |