| Abstract ： |
脳死状態における循環動態の研究はほとんど報告されていないのが現況である. 著者は犬脳死モデルを用い, catecholamine（CA）の投与下で, 左室圧容積関係と各種心機能指標の変化を解析した. 左室容積は超音波クリスタルで測定した左室短軸径からSugaらの近似式を用いて求めた. dopamine（5～15γ；DA群）, dobutamine（5～15γ；DOB群）, noradrenaline（0.5～1.5γ；NAD群）, adrenaline（0.5～1.5γ；AD群）の4種薬剤から1種を選び, 脳死前後で負荷し, 以下の指標の変化を測定した. 求めた指標はend-systolic elastance（Ees＝Emax）, effective arterial elastance（Ea）, ejection fraction（EF）, mean Vcf, peak dP/dTと通常の血行動態指標で, 次の結果を得た. 1.Eesは脳死後, 前値の56～73%に有意に低下し（NAD1.0γ, 1.5γを除く）, peak dp/dTも脳死前値より56～73%に有意に低下（全群）していた. 2.Eaも脳死後は43～70%に有意に低下し（AD群では不変）, Ea/EesはDA群, NAD群では脳死前値より低下していた. 3.DA群, NAD群では脳死後のEFは脳死前値を上回り, Eesとの解離を示した. 4.EFとEesの解離はEaを用いたSunagawaらの式から合理的に説明でき, 脳死前後に関わらず, EFは主としてEa/Eesによって決定されていた. 5.AD群では, 末梢血管抵抗並びEaは脳死前後で差を認めなかった. 結論：著者の脳死モデルでは左室の収縮性は約70%に低下した. 末梢血管のCAに対する反応性は心臓のそれより劣っていた. 脳死体の特異な循環動態のなかでEes, Ea, Ea/Eesの測定は重要であり, Ea/Eesは左室のポンプ機能を表すperformance indexであることが示唆された. |
