Authors : |
渡部智, 人見滋樹, 中村達雄*, 五十部潤*, 岡田賢二, 千原幸司, 青木稔, 田村康一, 和田洋巳, 清水慶彦* |
Abstract : |
慢性胸膜炎, 膿胸の経過観察中に胸部異常陰影の増強, 胸痛, 血痰など自覚症状の発現, 胸水中異型細胞の出現などの異常所見に遭遇することがしばしばあるが, 慢性炎症の憎悪か悪性腫瘍の発生かの鑑別診断は極めて困難且つ重要な問題である. われわれは, 慢性胸膜炎, 膿胸経過中に上記異常所見を認め, 外科治療を行った胸部悪性腫瘍6例を経験したので検討を加えた. 全例男性で, 年齢は35歳より69歳, 平均53歳であり, 異常所見として, 胸部異常陰影増強2例, 胸痛など自覚症状発現5例, 胸水中異型細胞出現1例であった. 慢性胸膜炎2例(いずれも肺結核人工気胸術後), 慢性膿胸4例であり, 発病以来の病悩期間は9年ないし48年, 平均30年間であった. 病理組織診断は, 悪性胸膜中皮腫2例, 扁平上皮癌2例(いずれも有瘻例), 悪性線維性組織球腫2例であった. 施行した手術術式は, 胸膜肺剔除術2例, 肺剔除術1例を含む腫瘍切除術であり, 絶対的非治癒術が1例あり, また2例に術後放射線療法を加えた. 腫瘍が再発した5例に, 再手術や化学療法, 放射線療法を行った. 全例腫瘍死し, 異常所見発見時よりの生存期間は3ないし15カ月平均9カ月と不良であった. なお, 胸水中に異型細胞, 胸膜生検にて悪性所見を認め, 胸部悪性腫瘍の発生を疑い手術を行った結果, 悪性所見のなかった慢性膿胸の1例を経験したので, 比較検討した. 慢性胸膜炎, 慢性膿胸の経過観察中は, 悪性腫瘍の合併を念頭に異常所見の発現に特に注意して早期発見・早期診断し, 外科療法を初めとする早期治療を行い予後の改善に努めるべきである. |