アブストラクト(37巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 胸部食道癌術後の反回神経麻痺の検討
Subtitle : 原著
Authors : 北村道彦, 西平哲郎, 平山克, 赤石隆, 標葉隆三郎, 関根義人, 実方一典, 樋口則男, 森昌造
Authors(kana) :
Organization : 東北大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 2
Page : 331-336
Year/Month : 1989 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 昭和51年より62年4月までに当科で切除術を受けた胸部食道癌300例のうち術後の反回神経麻痺は75例(25.0%)に発生した. 年次別にみると前期の発生率が15.3%であるのに対し後期は34.0%と明らかに増加した. 発生率の増加にはリンパ節の郭清範囲を含めて, 頸部上縦隔に対する手術侵襲の拡大が関与するものと思われる. 麻痺の発生部位をみると, 左側が56.0%と多く, 右側は12.0%, 両側が24.0%であった. 術中には特に左側の反回神経に対する愛護的操作が重要と思われる. 癌の占居部位別ではIuの発生率がIm, Eiより高く, 術式別では頸部吻合例の方が胸腔内吻合例より有意に高かった(31.9%:2.8%). 癌の進行度別の発生率には大きい差はみられなかった. 反回神経麻痺発生例では気管切開を行った例が非発生例に比べて有意に多く(12.0%:2.2%), 経鼻気管チューブを長期間挿管した例や抜管後に再挿管を必要とした例も有意に多かった(29.3%:10.7%). このような呼吸管理の結果, 術後1カ月以内の肺合併症の発生率は麻痺非発生例とほぼ同等であった(24.3%:21.8%). 一方術後1カ月以降の嚥下性肺炎の発生率は麻痺非発生例に比べて有意に高く(9.3%:2.2%), 2例を繰り返す肺炎で失っており, 術後長期間の呼吸管理が重要と思われる. 麻痺発生例の経口摂取の開始時期は非発生例に比べて約5病日遅れた. 水分を禁止し, 固型物や半固型物より開始することが誤嚥の防止には重要と思われる. 反回神経麻痺の経過をみると, 何らかの改善がみられたのは41.3%であり, 過半数は麻痺の改善がみられなかった. 麻痺の改善が確認された時期は術後3~10週と比較的早く, 健側の代償運動もほぼ同時期に確認された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 食道癌, 術後管理, 反回神経麻痺
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