Abstract : |
DeBakey III型解離性大動脈瘤の手術適応を検討するため, 昭和59年末までの19年間に教室で経験した60例(IIIa 11・IIIb 49)について, その治療成績を遠隔期予後を含め分析した. 急性期に来院した12例(20%)は降圧療法により, 全例が亜急性期に施行し, 1例を肺炎で失ったのみで, 急性期手術は必ずしも必要でないと考えられた. 手術は解離腔の拡大が著しいもの, 局所的な突出を有するものや, 破裂及び切迫破裂の症例を適応とし, 25例(42%, IIIa 7, IIIb 18)に行われたが, 手術死亡は慢性期破裂の1例を含め3例(12%)であった. IIIa型では遠隔期に非手術例の1例が関連死亡(破裂死)したが, 手術例の関連死亡はなかった. 退院したIIIb型のうち, 手術例の遠隔期関連死亡は16例中4例(25%)で, 非手術例の30例中8例(27%)と差はなく, 生存期間も共に5年生存率約50%と差はなかった. IIIb型の遠隔期予後をKaplan-Meyer生存期間曲線の検定により比較した結果, 左側大動脈胸廓比(ιATR(%)-下行動脈左縁の正中からの偏位と胸廓最大横径の比)が30%以上の症例(p=0.01)と, 腹部主要血管が解離腔から分岐する症例(p=0.04)では有意に予後が不良であった. IIIb型ではこういった症例で特に手術適応があるものと考えられたが, ことに若年者に対しては, 主要分枝の血行再建を含めた, より根治的な方法が必要と考えられた. |