アブストラクト(37巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 左心補助人工心臓による心停止下の長期間循環維持法の検討-心臓移植までの循環維持法の検討-
Subtitle : 原著
Authors : 高野久輝, 妙中義之, 中谷武嗣, 野田裕幸, 木下正之, 福田幸人, 阿久津哲造, 曲直部寿夫
Authors(kana) :
Organization : 国立循環器病センター研究所人工臓器部
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 3
Page : 411-422
Year/Month : 1989 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 急性高度心不全患者の治療手段として, 左心補助人工心臓(LVAS)が実用化されてきたが, LVASによる左心補助施行中に遭遇する回復不能の高度両心不全, 心室細動, 更に心停止は極めて深刻な問題であり, 心臓移植以外に救命の道は残されていない. 本研究においては, ヤギ12頭に心停止モデルを作成し, 心臓移植までの間, LVASのみにより全身循環を良好に維持するための条件と, 末梢循環, 肺循環及び主要臓器を含む生体挙動に関し検討を加え, 以下の結論を得た. 心停止時におけるLVASのみによる循環維持の原理は, 肺を介しての上流である右心系と左房圧の圧差に加えて, 汲み上げ効果による. 従って, 肺血管抵抗と右房圧が長期間の循環維持を決定する因子となり, 肺血管抵抗係数(PVR・I=PVR×体重)が10,000~15,000dynes.sec.cm-5.kg以下であれば, 右房圧を12~16(~18)mmHgに保つことにより, 全身の循環(血流量が80ml/kg/min以上)が維持され, ヤギは通常の生活が可能であった. PVR・Iが高ければ全身へ必要な血流量が得られず, 低心拍出症候群となった. しかしPVRが高い場合には, 肺血管拡張剤が効を奏する場合があった. 右房圧を高く保たなければならないために, ヤギにおいては胸水や腹水の貯溜を認め, 頻回の胸腔穿刺を必要とした. 胸水の貯溜の対策として, 膠質浸透圧, すなわち総蛋白量を高く(6.0g/dl以上)保つことにより軽減せしめえた. この結果38日間の長期生存例を得た. 臨床におけるFontan手術の効果を勘案し, 人間においては本法によりかなり長期間循環を維持せしめうるものと考える. LVAS施行中に遭遇する高度右心不全の合併, 心停止ないし心室細動が発生した場合には, PVR・Iが低ければ本法を適用することにより対応でき, 回復不能の場合でも心臓移植までの時間を十分に稼ぎうると考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 補助人工心臓, 左心バイパス, 心停止, 汲み上げ効果, 循環維持
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