Abstract : |
肺移植後には, reimplantation responseによる一過性肺機能低下が出現し, しばしば致命的である. そこで, reimplantation responseの原因を肺水腫及び肺循環動態の面から究明する目的で本実験を行った. 雑種成犬を用い, hilar stripping群, WIT(warm ischemic time)群, SOD(superoxide dismutase)群, autotransplantation群の4群を作製し, 術前及び術後60分に右肺動脈閉塞下に血液ガス, 肺動脈圧, 大動脈圧, 心拍出量, 二重指示薬希釈法による左肺血管外水分量(ιEVLW)を測定し以下の結果を得た. 1.二重指示薬希釈法による両側肺血管外水分量と右肺動脈閉塞により測定した左肺血管外水分量とは, r=0.943, p<0.001で有意な相関を認めた. 2.ιEVLWと全肺血管抵抗(TPR)は, 術前後でそれぞれhilar stripping群1.29±0.19倍と1.23±0.36倍, WIT群1.85±0.49倍と1.69±0.36倍, SOD群1.28±0.17倍と1.50±0.36倍, autotransplantation群2.28±0.40倍と1.70±0.34倍に変化した. このことから, 温阻血60分での肺移植後60分におけるreimplantation responseの原因として最も重要なのは活性酸素による再灌流障害であり, これにhilar stripping操作, 虚血障害, 手術侵襲が加味されており, 血管吻合は手技的に完全であれば, あまり問題にならないと思われた. 3.free radical scavengerであるSODは, 肺移植後の肺水腫を軽減すると考えられた. |