Abstract : |
体外循環中の脳血流量及び脳分離体外循環中の脳送血量に関しては, いまだ一定の見解が得られていない. そこで, 1.体外循環中の脳血流量を不活性ガス(アルゴン)飽和法によって測定し, 脳血流量と体灌流量あるいは体血圧との関係を検討し, 2.体外循環中の腕頭動脈血流量を電磁流量計により測定し, 脳血流量との関係を検討し, 脳分離体外循環の際の脳送血量の目安を定めることを目的とした. 対象は21例の体外循環症例で, ローラーポンプ, 膜型肺を用い, 鼻咽頭温26~28℃の低体温体外循環を行った. 体灌流量は40~70ml/kg/minとした. 体外循環中の脳血流量(33.8±8.9ml/100g脳/min)は, 体外循環前(30.6±5.5)より高値を示した(p=0.02). また, 体外循環中の脳血流量は, 体灌流量に比例し(r=0.62, p<0.01), 35~94mmHgの間では体血圧によって一定の変化を示さなかった(r=0.305, p<0.05). 体外循環中の腕頭動脈血流量と脳血流量の関係は, 腕頭動脈血流量9ml/kg/min前後を境に, それ以下では脳血流量は腕頭動脈血流量の低下に伴ってほぼ直線的に低下し, それ以上ではほとんど変化を示さなかった. 即ち, 腕頭動脈血流量を9ml/kg/min以上にしても脳血流量は増加しないことが判明した. 脳血流量と脳酸素消費量の関係から, 鼻咽頭温が26~28℃のときには脳血流量は少なくとも25ml/100g脳/minは必要であると考えられ, 前記の腕頭動脈血流量と脳血流量の関係から, 脳血流量が25ml/100g脳/minのときの腕頭動脈血流量は5.5ml/kg/minと求められた. 以上より, 脳分離体外循環時の腕頭動脈送血量の目安を5.5~9ml/kg/minとした. |