アブストラクト(37巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 低温心停止下灌流心における心筋酸素消費量に関する実験的研究-perfluorochemical cardioplegia及びblood cardioplegiaによる検討-
Subtitle : 原著
Authors : 田村謙二, 川島康生
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 4
Page : 612-621
Year/Month : 1989 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : cardioplegiaの基本組成としてperfluorochemical(perfluorotributylamine:平均15.7W/V%, FCP群)と血液(Ht:平均16.8%, BCP群)を用い犬摘出心の持続冠灌流を行い, 低温停止心の心筋酸素消費量(MVO2)を酸素配送の方法及び酸素配送量との関係より検討した. (1)灌流圧を40mmHgに維持し同一心筋を25℃から4℃へ段階的に冷却した場合, FCP群(N=8)とBCP群(N=7)のMVO2はともに有意に減少した. 25℃と20℃ではFCP群のMVO2(24.6±3.5(SD), 19.9±4.7μl/min/g dry wt)とBCP群のMVO2(24.0±6.6, 18.6±4.9μl/min/g dry wt)には有意の差を認めず, 10℃と4℃ではFCP群のMVO2(15.0±6.5, 11.3±3.7μl/min/g dry wt)は, BCP群のMVO2(9.7±4.3, 7.6±3.3μl/min/g dry wt)に比しそれぞれ有意(p<0.05)に高値であった. (2)20℃または4℃の一定心筋温度において酸素配送量を変化させた場合, 酸素配送量の増加に伴いMVO2は漸増した. その漸近線値を推定最大MVO2(maxMVO2)とすると, 20℃でのmaxMVO2は, FCP群(N=6)で20.4, BCP群(N=6)で21.4μl/min/g dry wtであり, 両群に有意の差を認めなかった. 4℃ではFCP群(N=8)で20.8, BCP群(N=7)で13.9μl/min/g dry wtであり, 両群に有意の差(p<0.05)を認め, 且つ4℃FCP群のmaxMVO2は20℃FCP群と有意の差を認めなかった. maxMVO2の50%のMVO2が予想される酸素配送量は, 4℃FCP群は20℃FCP群の2倍を要した(4℃;27.0, 20℃;13.5μl/min/g dry wt). 以上より, 灌流圧を一定にした場合心筋温が25, 20, 10, 4℃の4者では10℃以下でFCPはBCPよりも高値のMVO2をもたらし得ることが示された. また, FCPにより酸素配送を限り無く増加させた場合, 4℃では20℃に比し酸素摂取の効率は低下するが, 4℃でも20℃と変わらないMVO2が生じ得ることが推察された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心筋酸素消費量, cardioplegia, perfluorochemical, 溶存酸素, 脱共役
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